練る子は育つ

都内のIT企業で働く28歳女性。読書、音楽、ゲームの記録

やられたミステリ「medium 霊媒探偵城塚翡翠」/ネタバレあり感想というか反省

面白いミステリを読みました。作品のキャッチコピーは「すべてが、伏線。」
さらに綾辻行人さんや有栖川有栖さんからの絶賛コメントや書店員さんによる「最驚」なんてコメントも並んでおり、読む前からハードルあげまくりな本作。
「一語一語に意味があるよ」なんてツイートも見つけたので、最初からだいぶ身構えて読んだんだけど…悔しくもまんまとやられました。
とりあえずネタバレなしで言えるのは「美人霊媒翡翠ちゃん可愛い」ということくらいです。
そして最後まで読んでこそ、真の可愛さに気づくはずです…

 

「medium 霊媒探偵城塚翡翠」、相沢さんの作品は初読です。

medium 霊媒探偵城塚翡翠

medium 霊媒探偵城塚翡翠

 

 

!!以下感想(というか反省)ですが、ネタバレだらけです!!


なるほど「ハウダニット」「ホワイダニット」モノね、と思い込む

作中で展開される事件は2種類。
霊媒師「城塚翡翠」と推理小説作家「香月史郎」によって解決されるもの
②インタールードとして語られる、犯人不明の連続殺人事件


メインとなるのは①の事件で、霊媒師の城塚翡翠が霊能力によって犯人を見つけ、推理作家の香月史郎が論理によって犯人を特定する、というのが事件解決の基本構造。
香月は犯人を知ったうえで「逆算の論理」を組み立てることで、3つの事件を解決に導く、のだが…。


まずミステリ好きとしては「霊媒の力で犯人を見つけるのはインチキだ!」と思いつつも、そこに至るまでの経緯つまり「どのように殺したのか(ハウダニット)」「なぜ殺したのか(ホワイダニット)」を楽しむミステリなんだなと勝手に解釈。
「あの人は犯人じゃないって知ってるけど、それをどう証明すれば…」な逆の考え方はけっこう面白かったし、むしろ「最近フーダニットばっかりだったし新鮮だな」とすら思うなど。
「いいよ霊能力みたいな飛び道具使っても!そこに至る論理がしっかりしてれば!」くらいの気持ちだったんだけど、これが完敗の原因でしたね。。

 
どんでん返しで #翡翠ちゃん可愛い

②の犯人がじつは「香月史郎」でした、というのがこの物語における"1つ目"の驚きポイント。
ただし、これについては私も薄々感じており、「こういう展開は全然ありえるな、でもこれだけだとけっこう既視感…」なんて思っていたのですが。


仕掛けはもうひとつ。城塚翡翠の「霊媒」こそインチキだった…!
犯人にたどり着けたのは彼女の「探偵力」ゆえ。そして香月が連続殺人事件の犯人であることにも気づいていたうえで接触していた。


これにはびっくりでした。
突然翡翠ちゃんに「え、霊能力なんてほんとに信じてたのー?」と読者もろともバカにされるのだから!!


しかも、香月に殺されそうになった彼女の突如としたキャラ変にも驚き。
ナイフを突きつけられて縄で縛られると、高らかに笑い声をあげる狂気的な彼女。
いやいやここまでは、駅で男性に絡まれたり、酔っ払って香月先生の肩にもたれかかったり、ふらついて胸元を見せたり、制服を着て写真に撮られたり(これは仕方ないけど)、と"あざとかよわい"女性だったんだけど…
それもすべて演出だったとのことで。

同性だったら吐き気を催しそうなくらいにぶりっ子な台詞を口にしたときのことです

あんな、友だちいないアピールをするうざいメンヘラ女子なんて、この世に存在するわけないじゃないですか。いや、いるかもしれないですけれど、わたしみたいに可愛くて綺麗な子がぼっちのはずないでしょう?

ああ、わたしが、先生におっぱいを見せてあげたときですね


ワーーーー。
いや正直、読みながらあんまりこのヒロイン?好きになれないなーとまで思ってたんだけど。それすらも掌の上だったなんて、まんまと騙されました。
翡翠ちゃん、強くて聡明で可愛いです。 


ふつうにフーダニットだった~

で、彼女の口から3つの事件の「犯人特定にいたるまでの推理」を聞かされるわけです。
これがまためちゃくちゃ論理的で笑う。そして煽る煽る。

推理小説なら、ここで読者への挑戦状が挟まれるタイミングです。

よろしいんですか?わたしが説明してしまって?考えることを放棄しちゃいます?

本当に先生は、世界を見る目がないようです。見ることと観察することはまったく別物ですよ?


ホームズだーー。


最初に香月が出した「逆算の論理」とはまた別の推理が展開される。
それは霊能力でもなんでもなく、現場に残された些細な手がかりによってもたらされたもの。
まっすぐなフーダニットでした。

真実に至る論理がたった一つでなければならない道理なんて、どこにもありません。面白い発見でした

この世にある推理小説の中にも、探偵が用いたのとはまったく別の、隠された論理を用いて犯人を特定できる作品が、どこかに隠されているかもしれないという気になれましたよ


"別の論理で犯人を特定できる可能性"については、ミステリを読みながらいつも念頭にあったので、
本格ミステリに対するアンチテーゼというか、フラットな挑戦というか…、唸りました。
とはいえ結局物語は作者の掌の上にあり、作者に都合のいいようにできてしまうものだからとっても難しいんだけど(…という話を以前、有栖川先生もしていらっしゃった)。

 

 
いやー面白かったです。
エピローグの、翡翠ちゃんの助手・真ちゃんとのやりとりもよかった。
この手は(読者に対して)もうできないとはいえ、続編を匂わせる終わり方だったので期待しています。

にしても今作にしろ「魔眼の匣の殺人」にしろ、本格ミステリへのアンチテーゼ的な作品を続けて読んでいる。ミステリ好きだからこそまんまとハマってしまう感じが悔しくも快感です。

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