練る子は育つ

都内のIT企業で働く28歳女性。読書、音楽、ゲームの記録

抜け出せない物語/森見登美彦「熱帯」感想

「最後まで読んだ人間がいない」という小説「熱帯」を巡る物語。森見登美彦の世界はただでさえ独特なのに、今作は物語の構造や空間までフワフワしているので、自分がいま何を読んでいるのか見失う場面が多々あった。読み終わったあとは思わず最初に戻ってしまうような、ふしぎなものがたり。
森見さんご本人も「我ながら呆れるような怪作である」とコメントされています。
うーん、フワフワ感を味わいたい人にはいいと思う!スッキリ感を求めている人には向かないかな。

本屋大賞2019ノミネート作品。

熱帯

熱帯

 

あらすじ

汝にかかわりなきことを語るなかれ――。そんな謎めいた警句から始まる一冊の本『熱帯』。
この本に惹かれ、探し求める作家の森見登美彦氏はある日、奇妙な催し「沈黙読書会」でこの本の秘密を知る女性と出会う。そこで彼女が口にしたセリフ「この本を最後まで読んだ人間はいないんです」、この言葉の真意とは? 
秘密を解き明かすべく集結した「学団」メンバーに神出鬼没の古本屋台「暴夜書房」、鍵を握る飴色のカードボックスと「部屋の中の部屋」……
幻の本をめぐる冒険はいつしか妄想の大海原を駆けめぐり、謎の源流へ!

 

<ネタバレあり感想>

感想書くの超難しいけど、読み終わって感じたのは、「はてしない物語」「不思議の国のアリス」「ドグラ・マグラ」みたいだなーと。ファンタジーかつアドベンチャーで、追いかけているものをなかなか掴めなくて、同じところから抜け出せないような展開。
特に後半はなぜか異世界へループするし、時系列もちょっとよくわかんないし、地に足がつかない状態で(ちょっとストレスを感じながら笑)なんとか読み切った。一言でいえば「(寝ているときに見ている)夢」のような作品。


とにかく「熱帯」に魅せられた人々がその謎を解明するべく追い続けるのだが、森見さん(と思しき人)の視点に始まり、白石さんの語りにつながり、池内さんの手紙パートになり、どうやら池内さんが謎の島へ飛ばされ「熱帯」作者の佐山尚一に出会い、…ダメだ、この作品の展開は説明できないです。

この本を最後まで読んだ人間はいないんです

とか

世界の中心には謎がある

とか

謎はそのままにしておくことが大事よ 

とか、この言葉たちにわくわくさせられた気持ちがうまく消化されなかったのが残念だったな。

ただ、白石さんのこのセリフにはめちゃくちゃ共感した!

たしかに小説がなくても生きていけます。でも面白い小説が読み切れないほどあるということはそれだけで無条件に良いこと、それだけでステキなこと、みんなよく頑張った、人類万歳!そう思えたんですよ