"読者への挑戦"つき。「体育館の殺人」ネタバレなし感想
「体育館の殺人」読みました。面白かった。以下、ネタバレなし感想です。
ストーリーは至ってシンプル
タイトルそのまんまで、高校の体育館で殺人事件が起こるという話。被害者は高校生。登場人物も生徒と先生。ホームズ役もワトソン役も生徒。
今回の事件の謎は、「誰が殺したのか?」(フーダニット)と、「どう殺したのか?」(ハウダニット)の2つです。
特に、殺害現場が「密室」になっているのがポイント。
ロジカルすぎる?展開
高校生モノなのに、登場人物の「高校生らしさ」はあまりありません。探偵役のキャラは「アニメオタク」など個性立っていますが、そのほかのキャラは無味無臭で、人一人死んでるっていうのにみんな落ち着いててみんなアヤシイ。そこに「学園モノのワクワク」はない。ひたすら情報を集め、アリバイを検証し、トリックを考察する。まっすぐコツコツと積み上げていきます。恋愛とか青春の要素も皆無。高校が舞台なのに!!
しかも、章タイトルにも感情はナシ。たとえば第二章のタイトルは「第二章において探偵役が登場する」、第四章は「第四章の末尾ですべてのヒントが出そろう」。こんな"メタ"なタイトルも珍しいなあと思いました。
極めつけは「読者への挑戦」
第四章の終わりにはこんなページが。
いわゆる「読者への挑戦」です。ああ、これがやりたかったからこれほどまでに淡々とロジカルに物語が進行したのかと納得しました。
文字通り、「作者から読者への挑戦状」。ここまでで謎を解く鍵はすべて提示しましたよ、さて解けるかな、というものです。過去にも挑戦状を挟んだミステリ作品は多々あります。これをやるには「情報のフェアな開示」が最重要だもんな。
作者も言っているとおり、わざわざ遡って推理したり、メモをとってまとめたりは私もしません。でもいったんここで、ちょっとだけ立ち止まって、「犯人が誰か」だけでも予想してみるとそのあとの解決編をいっそう楽しめます。
なにより、「小説の中に作者が登場する」という構造がいい。ご法度かもしれないけど、私は「挑まれている感」が好き!一気に読書が受け身じゃなくなります。たいてい、この挑戦には勝てないけど。
まとめ
面白かったです。文体はカジュアル、出てくるひとたちもカジュアル、だけど内容はロジカルで「アリバイ」「トリック」の情報が逐一積み上げられていく感じ。正直(読者への挑戦で作者も書いていたけど)「動機」については弱いと思いましたが、この作品はそこを楽しむモノではないな、と勝手に納得しました。
作者さんと同い年だー。すごいなー。
次の「水族館の殺人」も読んでみようと思います。