綾辻行人「びっくり館の殺人」感想(ネタバレなし)
結論、私はこのシリーズの中なら他の作品のほうが好き。
少年の日の思い出のなかに建つ館、それは「お屋敷町のびっくり館」。…不思議な男の子トシオとの出会い。囁かれる数々の、あやしいうわさ。風変わりな人形リリカと悪魔の子。七色のびっくり箱の秘密。そして…クリスマスの夜の密室殺人!鬼才・綾辻行人が紡ぎ出す、終わりなき悪夢の謎物語。
<ネタバレなし感想>
不気味なお屋敷「びっくり館」が舞台。「大人でも子どもでも楽しめるものを」というリクエストに応じて書いた作品とのこと。従来の館シリーズと違って町中にあるので、今作の主人公・三知也の学校でも「あの館知ってるー?」と怪しい噂が立っており、より身近で現実的なところが特徴的。そういう、入りやすくて読みやすい視点が「子ども向け」なんだろうな、と思った。
しかし、それが功を奏して?めちゃくちゃ怖い!ミステリ通り越してちょっとホラーだよ…。この不気味な館の雰囲気は最高にドキドキするのですごくいいなと思うんだけど、私が子どもだったらこの結末、ちょっとトラウマになりそう。。
館シリーズをこれまで7作読んできた身としては(特に7作目がめちゃくちゃ長かったこともあり)謎解きの面でかなり物足りなかった。というか番外編っぽい。綾辻先生ご本人が「館シリーズのひとつ」と公言しているけど、同じように読んだ人からの「館シリーズっぽくない」っていう感想はたくさん見かけました。
私は十角館とか迷路館みたいな、コテコテの謎モノが好きなので、今作はあんまり好みではなかったです。
次は奇面館読みます!
リアル脱出ゲーム「謎の部屋からの脱出」感想
新年一発目のリアル脱出ゲーム参加!!
リバイバル公演。大好きなアジト型です。
ネタバレNGなので感想
- アジト型。10人1組で、ひとつの部屋から脱出するかたち。
- リバイバル公演ということで、ストーリーはかなりあっさりめ。
- 最初にスタッフさんから説明あったとおり、謎解きというより探索メイン。
- 本当に探索メイン。探索、探索、謎、探索、探索……
- なので、謎解き初心者でも全然楽しめると思う。
部屋から脱出する!がミッションの、わかりやす~い脱出ゲームでした。アジト型はやっぱり楽しいですね。ワイワイできるし、脱出感あるし。
しかし結果は残念ながら【失敗】だった…。圧倒的探索力不足。
リバイバルものをやると、「最近の脱出ゲームは凝ってるな~」と思います。
新年一発目の脱出ゲーム、失敗した。。最初にスタッフさんから説明受けた通り、たしかに謎解きというより探索メインだった。過去のリバイバル公演ということもあり、構造はかなりシンプル。 #謎の部屋からの脱出 #脱出ゲーム
— ナツミ (@natsumix7239) 2018年1月21日
「もう読みたくない」トラウマ本3選
読書数は年間60冊くらいなのでそんなに多いタイプではないんだけど、2017年も「ああ怖かった…もう読みたくない…」と思った本があったのでこれを機に私のトラウマ本を紹介したいと思います。
やさしくて穏やかな小説も素敵だけど、たまには心がザワつく物語もいかがでしょうか。
1.恩田陸「Q&A」
都下郊外の大型商業施設において重大死傷事故が発生した。死者69名、負傷者116名、未だ原因を特定できず―多数の被害者、目撃者が招喚されるが、ことごとく食い違う証言。防犯ビデオに写っていたのは何か?異臭は?ぬいぐるみを引きずりながら歩く少女の存在は?そもそも、本当に事故なのか?Q&Aだけで進行する著者の真骨頂。
質問形式で進んでいくちょっと変わった小説。事故に関わった人々にインタビューすることで、あらゆる方面から事故の状況をつかんでいく…というストーリーで、どんどん引き込まれていく。だが、証言が少しずつかみ合わないのである。その「不気味さ」もクセになって、ページをめくる手が止まらない。
そして、形容しがたい「怖さ」をまとったまま、小説は終わるのである。
例えて言うなら、お化け屋敷をぐんぐんと進み、このへんでお化けが出てきそう…なドキドキMAXのところで放り出される感じ。ホラー小説ではないのでお化けは出てこないのが特徴的。私はミステリは大好きだけどホラーは全くダメなので、この何とも言えない怖さがトラウマになりました。
2.辻村深月「盲目的な恋と友情」
タカラジェンヌの母をもつ一瀬蘭花(いちのせらんか)は自身の美貌に無自覚で、恋もまだ知らなかった。だが、大学のオーケストラに指揮者として迎えられた茂実星近(しげみほしちか)が、彼女の人生を一変させる。茂実との恋愛に溺れる蘭花だったが、やがて彼の裏切りを知る。五年間の激しい恋の衝撃的な終焉。蘭花の友人・留利絵(るりえ)の目からその歳月を見つめたとき、また別の真実が――。男女の、そして女友達の妄執を描き切る長編。
2017年の個人的ベスト3にも挙げた1冊だけど、正直もう読み返したくない。
前半「恋」、後半「友情」の二部構成。「恋」のヒロインは蘭花。自分自身の魅力に気づいていない美女の、恋愛模様を描いたこの第一部は別にいい。タイトルどおり、盲目的な恋ってあるよねーくらいの感想。問題は、第二部「友情」である。視点が変わって、蘭花の友人である(と自分では思っている)留利絵が主人公となり、第一部の物語を別視点で再度なぞっていく。蘭花の一番の理解者は自分だ、と思い込んでいる留利絵の、狂気的な行動にももちろんぞくぞくする。だけど、この小説の怖さはそこだけじゃない。たとえば美人と一緒に歩くときの、「私こんな美人と友達なの、いいでしょ」っていう優越感と、「この子には勝てない」っていう劣等感。「狂気的な女の子」のとる感情に、私自身も共感できる部分があると気づいたとき、違う意味での怖さを感じたのである…。
結末は「やられたー」感があって全体としては面白い(ただしめちゃくちゃ暗くて重い)んだけど、心が痛い部分が多すぎました。
3.柚木麻子「ナイルパーチの女子会」
ブログがきっかけで偶然出会った大手商社につとめる栄利子と専業主婦の翔子。互いによい友達になれそうと思ったふたりだったが、あることが原因でその関係は思いもよらぬ方向に―。女同士の関係の極北を描く、傑作長編小説。
直木賞候補にあがり、山本周五郎賞を受賞している作品なんだけど、私にはまったく合わなかった。拒否反応が出るレベルで。
キャリアウーマンの栄利子と専業主婦の翔子が築いていく、友情とはとても言えない歪んだ関係。やっと見つけた「女友達」に固執するあまりストーカー的にエスカレートしていく行動。ストーリー自体のぞわっとする怖さよりも、主人公二人のどちらにもまったく共感できないイライラが勝ってしまった。「女子の色々」を描いた作品ってだいたい何かしら共感したり、共感しすぎてつらくなったりと、自分と重ねあわせながら読むことが多いんだけど、面白いくらいに意味がわからない。彼女たちの暴走した行動はいわば小説的なのでそこに共感する/しないは求めないのだけど、そもそもの「こういう女子っているよね」の前提についていけなかった。
ただ、この作品には「異なる価値観」を受け入れる・受け入れられないというひとつのテーマがある。その意味で言うと、私もその「異なる価値観を受け入れられない」彼女たちと同類なのかも…と立ち止まってゾッとした。2で挙げた辻村深月の小説は「共感できて」怖かったけど、この小説は「共感できなさすぎて」怖かった。
以上3作が、もう読みたくない、トラウマ本です。
ちなみに、恩田陸さんの「蜜蜂と遠雷」、辻村深月さんの「ハケンアニメ!」、柚木麻子さんの「ランチのアッコちゃん」「本屋さんのダイアナ」は超超超大好きな本です。
この3人の書くものは、良いほうにも悪いほうにも私の心を揺さぶるので、作品によっては好き嫌いがあるものの、いつも読むのが楽しみ。
【LIVE】B'z LIVE-GYM 2017-2018 “LIVE DINOSAUR”
B'zのLIVEに行ってきました。
アルバム「DINOSAUR」を引っ提げての全国ツアーということで、
(実はそれを知らずに応募しており)ギリギリになって詰め込んでから行った…。
B'z、初めて生で見たんだけど、まず…稲葉さんやばい!
53歳とは思えないパワフルさ。全21曲、圧倒的な声量で歌い上げてた。シャウトしてた。
CDとかテレビで聴くのと本当に同じ。だけど、生だから、より音圧がすごい。
汗だくになりながら歌ってて、めちゃくちゃワイルドでかっこよくてびっくりした。
でもMCでは低姿勢で、「寒い中足を運んでいただきありがとうございます」「LIVEにきてくれてありがとう」と何度も言っていました。
tak matsumotoのギターの音も超よかった。いちいち気持ちのいいリフ。ずっとサングラスかけてた。
ドラムのシェーン、まず顔が超イケメンだった。
パワフルだけど楽しそうに叩いてたし、フォームも私好みのキレイさ。けっこうスティック回し多めなんだね。
これを機にインスタもフォローしました。うまい。。
▼セトリ
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B'z LIVE-GYM 2017-2018 “LIVE DINOSAUR”
1/14(日)@さいたまスーパーアリーナ
- 声明
- CHAMP
- 孤独のRunaway
- ハルカ
- ルーフトップ
- FIREBALL
- MOTEL
- 赤い河
- SKYROCKET
- それでもやっぱり
- 愛しき幽霊
- 弱い男
- Purple Pink Orange
- イチブトゼンブ
- DIVE
- Dinasour
- King Of The Street
- フキアレナサイ
- Still Alive
- ultra soul
- BANZAI
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生ウルトラソウルでジャンプできて超楽しかった。
コール&レスポンスもちょこちょこ。タオル回したのは1曲だけ。
MCで「これだけ長いことやってると、『古い』とか『新しい』とかわからなくなってくるけど、僕たちは僕たちのスタンスで続けて行こうと思っています。野太いギターを聴いて、『元気が出た』とか『頑張って生きていこう』と思ってもらえたら嬉しいです」
と言っていて、本当にそのとおり、熱いギターサウンドに超パワーもらいました。
お洒落シティポップだけじゃなくて、こういう、体当たりでまっすぐな音楽もやっぱいいなーとあらためて。
「おとなの掟」から見る2017年の椎名林檎まとめ
2017年はライブこそなかったものの、新曲もちょこちょこあって、林檎ファンとしては楽しい1年だった。
改めて振り返ってみると、「おとなの掟」(というかドラマ「カルテット」)を1年間、林檎さんが至るところで話題に出していたな〜と思ったので、
この曲を軸に個人的にまとめておく。
2017年まとめというより、「おとなの掟」まとめ、みたいな内容だけど。
ざっくり…↓
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2月:「おとなの掟」楽曲提供(ドラマ「カルテット」主題歌)
4月:「目抜き通り」(withトータス松本)をリリース
12月:セルフカバーアルバム「逆輸入〜航空局〜」をリリース
「おとなの掟」英語ver収録
「おとなの掟」日本語ver(with松崎ナオ)をリリース
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2017年はドラマ「カルテット」の主題歌「おとなの掟」から始まった
まず、「おとなの掟」はドラマ「カルテット」内の限定ユニット「Doughnuts Hole(ドーナツ
ドラマ内の主人公である松たか子、満島ひかり、高橋一生、松田龍平の実力派俳優4人が歌っている。
特に松たか子と満島ひかりの歌声が、艶っぽくてミステリアスで、ドラマの役どころにも合ってて最高によかった。。
カルテット主題歌 おとなの掟 / Doughnuts Hole (椎名林檎 )
林檎さんご自身が、この「カルテット」の大ファンで、「聖地巡礼をした」と語るほど。
カルテットへの愛は、ファンクラブのメルマガだけじゃなくて、紅白歌合戦とかテレビでも1年通してずっと言ってたなあ。
12月にセルフカバー、アルバム「逆輸入〜航空局〜」に収録
2月にリリースされてから「林檎っぽい」「林檎さんにカバーしてほしい」という声が(当然ながら)あがっていたんだけど、
そう言われる楽曲って例えばともさかりえに提供した「少女ロボット」「カプチーノ」などなど過去にも多々あって、
結果その曲は東京事変時代のライブでカバーしたり、第一弾のセルフカバーアルバム「逆輸入〜」に満を持して収録されたりしたから、
いつかはセルフカバーしてくれるんだろうなあ〜と(2月時点で)思ってた。
思ってたんだけど、まさかの12月に実現しました!!
セルフカバーアルバム「逆輸入〜航空局〜」がリリースされ、そこに収録されました。
年内!年内に実現するなんて!!
しかしながら、林檎さんが歌うこの曲は、もはやお約束とも言える「英語」バージョンだった。日本語じゃない。日本語じゃないー。
お約束、というのも、SMAPに提供した「華麗なる逆襲」もそうだけど、彼女がセルフカバーをするとき、「あくまで先方のために書いた曲だから」「男言葉が強すぎるから」などの理由で英語にすることがある。
だから内心「あーまたか」って思いました。
この曲についても、「松さんたちの世界観を壊したくない」「だって、『おとなは秘密を守る』なんて、松さん以外に言われたくないじゃないですか」って言ってた。たしかMステで。
ライナーノーツにもこう書いてある。
モノホンの楽器の場合、曲のなかで重要な音がよりよく響くキー設定をしたいものです。印象付けたいフレーズや構成音は作曲段階ですでに明確にあるものですから。ドラマのためのオリジナル版は、ボーカルのスイートスポットを優先してキーを設定し直しましたが、今回は曲のほうが生まれながらに意図した楽器の“鳴り”を記録しています。響きを聴き比べていただけますと幸いです。ボーカルについては、ドラマのキャストによるエンディングテーマが何より素晴らしいですから。
林檎さんは、提供曲は自己の表現ではなく「先方のオーダーに沿ったもの」を仕上げることをゴールにしてる。言われてみると、お仕事だから当たり前ではあるけど。
この素晴らしすぎるインタビューでも、こう語っている。
ドラマ「カルテット」のために制作した「おとなの掟」も、毎話、エンディングで流れる松たか子さんたちの歌がすばらしかった。私が歌うよりも、SMAPの皆さんや松さんたちが歌って下さることの方が、日本を、世の中を明るくする効き目が高いですからね。
提供曲は、キーも歌詞も編曲も、必ず歌って下さる方に合わせたオーダーメイドで仕立てています。この方にいま歌っていただくために最もふさわしい和声と旋律と歌詞は何か。それを探す作業は、楽しくもあり、苦しくもあります。
それにしたって、一ファンとしては日本語で聞きたい。日本語で「音」覚えちゃってるもん。英語だと、頭の中で一緒に口ずさめないから…。
新曲への反応はSNSでエゴサする
しかし、アルバムリリースを記念して放送されたAbemaTVでの特別番組では
「お客さんのツイートとかで『また林檎英語かよー』っていう意見も目にしてる」
って言ってた。
続けて、「『その気持ちはわかったけど、でもまず一回聞いてほしい!こっちもいいから!』って思ってます」
というようなことを言っており、
ファンが私のように「日本語を希望」していることについてはご本人も自覚があるようだった。
林檎さんがSNSをがっつりチェックしてエゴサする光景ってあんまり想像できないけど、言われてみれば「お客さんが求めているものを提供したい」という彼女の商業的なスタンスの表れって感じで面白かった。
ちなみにこの番組は生放送で、しかも林檎さんが斎藤ネコさんたちとお酒を飲みながら新作について振り返るという最高の放送でした、ありがとうAbema。
松崎ナオとの「おとなの掟」
上述したことのほとんどが12月に起きた出来事で、アルバムリリースに向けて露出が一気に集中した月だったんだけど、
Mステスーパーライブで「松崎ナオとおとなの掟を披露します」という情報を見たときは「えっ、新しいことまだあるの!」って正直思いました。
しかも、披露されたのは「日本語バージョン」!!
セルフカバーのとき以上に、まさかまさかの驚きだった。超嬉しかった。
いつものシックで大人な「おとなの掟」の雰囲気とは打って変わって、二人でギターを構えながらのロックアレンジ。よかった。
これならガラッと違う世界観だから、日本語で表現してもいいやって思ったのかなーなど勝手に推察です。
▼日本語verのときの
はい美しい#椎名林檎 #松崎ナオ pic.twitter.com/2IFvKVSKR4
— hebineko01 (@hebineko01) 2017年12月22日
▼英語verのときの
【おとなの掟】
— 木瀬冬斗【キューブリック・ムービー】 (@c_w_fiction) 2017年12月11日
先週の話。
FNS歌謡祭の椎名林檎に感動。
曲が終わってからの数分間、開いた口がふさがらなかった。これこそがエンターテイメント。英語verもいいが日本語歌詞で聴きたいと思った方も多いのでは?#FNS歌謡祭 #fns #椎名林檎 #おとなの掟 #音楽 pic.twitter.com/KhjFl0x81o
大晦日は紅白歌合戦でトータス松本と「目抜き通り」披露
2017年最後は「目抜き通り」で締め。
Mステと紅白の『目抜き通り』を交代交代に見て楽しむ。林檎嬢、トータスさん始め、バンドさん、ダンサーさん、皆それぞれ洋装も和装も最高に格好いい。そして洋風のときは女性をたてた演出、和風のときは男性をたてた演出。こういうプロデュース能力の高さが、私が林檎嬢を好きでいる要因の大きな所。 pic.twitter.com/F44wAe9dVC
— 吉野 (@smiyoshino) 2018年1月10日
「THE ショー」で、かっこよかったです。ご自身の夢としてあげていた「キャバレー経営」ぜひお願いします。
ちなみに曲紹介のとき、紅白審査員の高橋一生と吉岡里帆と「カルテットの大ファンで…」って会話してた。いい絵だった。
2020年の東京オリンピックも頑張ってください!
2017年読了本ベスト3
2017年は約60冊読みました。
中でも、面白かった本ベスト3は以下。
1.恩田陸「蜜蜂と遠雷」
私はまだ、音楽の神様に愛されているだろうか?ピアノコンクールを舞台に、人間の才能と運命、そして音楽を描き切った青春群像小説。著者渾身、文句なしの最高傑作!
直木賞と本屋大賞をダブル受賞してる作品なので私が勧めるまでもないんだけど。。
物語の主人公たちは、才あるピアニスト。
なので、凡人である私が彼らに感情移入できるかといえばそうでもないんだけど、
じゃなくて、観客として彼らの演奏を見ているような気分になるのがすごい。
音楽なのに、文章なのに、鳥肌が立つ。びっくりした。
コンクールの独特の緊張感を経験したことのある、ピアノとか吹奏楽とかやってた人に特にオススメ。
ただ…物理的に「長い」ので、ふだん本を読まない人にとってはそこが一つハードルかもしれません。
2.岡嶋二人「クラインの壺」
200万円でゲームブックの原作を、謎の企業イプシロン・プロジェクトに売却した上杉彰彦。その原作をもとにしたヴァーチャルリアリティ・システム『クライン2』の制作に関わることに。美少女・梨紗と、ゲーマーとして仮想現実の世界に入り込む。不世出のミステリー作家・岡嶋二人の最終作かつ超名作。
「ゲームの世界に迷い込む」という、正直今ならありがちなストーリー。
私も読みながら「ソードアートオンラインかな?」って思った。
でもこの作品、何がすごいって、発売されたのが1989年だというところ。
ソードアートオンラインだって流行ったの2000年以降だし、バーチャルゲームなんてない時代にこんな小説があったとは。
スピード感あふれる文章で、スリルたっぷりの飽きがこない展開だから超読みやすい。
物語を読み進めていくにつれて、タイトル「クラインの壷」状態になり、読後は奇書「ドグラマグラ」ばりに混乱します!没入感素晴らしい。
3.辻村深月「盲目的な恋と友情」
これが、私の、復讐。私を見下したすべての男と、そして女への――。
一人の美しい大学生の女と、その恋人の指揮者の男。そして彼女の醜い女友達。彼らは親密になるほどに、肥大した自意識に縛られ、嫉妬に狂わされていく。そう、女の美醜は女が決めるから――。恋に堕ちる愚かさと、恋から拒絶される屈辱感を、息苦しいまでに突きつける。醜さゆえ、美しさゆえの劣等感をあぶり出した、鬼気迫る書下し長編。
これは…ベスト3に入れたものの、オススメというわけじゃない。
というか私はもう読みたくない。嫌悪レベル。
それくらい、登場人物の思考と行動に背中がゾクッとするし、そこに共感できちゃう部分もあって、めちゃくちゃしんどい。
女子のヒエラルキーってあるじゃん。特に、「美人の隣」っていうポジション、あるじゃん。
美人の隣にいる「認められた」私と、美人の隣にいる「美人じゃない」私、の、自意識のぐちゃぐちゃがエグいです。
番外編:カズオ・イシグロ「わたしを離さないで」
優秀な介護人キャシー・Hは「提供者」と呼ばれる人々の世話をしている。生まれ育った施設へールシャムの親友トミーやルースも「提供者」だった。キャシーは施設での奇妙な日々に思いをめぐらす。図画工作に力を入れた授業、毎週の健康診断、保護官と呼ばれる教師たちのぎこちない態度……。彼女の回想はヘールシャムの残酷な真実を明かしていく。
ノーベル文学賞を受賞したから読んだ。
丁寧で優しくて、切ない物語でとてもよかった。
序盤から「提供」「介護」という違和感のある単語が並びながらも、主人公たちが友情や恋愛に悩む「ふつうの」学校生活が淡々と描かれる。
読みながらなんとなく、この世界の設定に気づいていくんだけど、あたかもそれが「ふつう」であるかのように種明かしされる構成にびっくりした。
回想の中でも時系列がかなり前後するけど混乱せず読みやすかった。
ミーハー心で読んで正解の小説です。
ミステリクラスタとしての番外編
2017年は麻耶雄嵩の「貴族探偵」のドラマ化を受け、マヤ作品に初めて手を出しました。
マヤ作品はミステリの中でも「異端」とされていたので、新本格が好きな私はちょっと距離を置いていたんだけど、読んでみてわかった。確かに異端。
ありえないでしょ、それミステリでやっちゃダメでしょ、なんでもありになるでしょ、っていう、突っ込みどころ満載の作品が多かったです。
でも、エンタメとしては面白かった。
特に「いやいやいやwwwぐちゃぐちゃやんwww」となったのはこちら↓
麻耶雄嵩「翼ある闇 メルカトル鮎最後の事件」
首なし死体、密室、蘇る、死者、見立て殺人……。京都近郊に経つヨーロッパ中世の古城を彷彿させるゴチック調の館・蒼鴉城を「私」が訪れたとき、惨劇の幕はすでに切って落とされていた。事件の最中、満を持して登場するメルカトル鮎。そして迎える壮絶な結末!
こっちはもはや興ざめレベルのありえない展開。読了後、本を投げたくなる↓
麻耶雄嵩「隻眼の少女」
古式ゆかしき装束を身にまとい、美少女探偵・御陵みかげ降臨!因習深き寒村で発生した連続殺人。名探偵だった母の跡を継ぎ、みかげは事件の捜査に乗り出した―。
「隻眼の少女」は第64回日本推理作家協会賞、第11回本格ミステリ大賞をダブル受賞してるらしい。本格ってなんなんだと頭を抱える。
どちらも、ある程度「一般的な」ミステリ作品を読みなれた人が読んだほうが、楽しめると思います。
以上、2018年は80冊を目標に読むぞー。
物語のある文章
SPURのインスタアカウントが好きです。
たとえばこれ!ちょっと長いけど、文章が素敵なので読んでほしい。
このLOEWEのフレグランスの投稿とか、物語があっていいよね!!
欲しくなる文章。
「毎日つけたいと思える香水ってなかなか出会えない」のに、
この香水を「毎日はまってつけている」理由が
具体的に熱を伴って伝わってくる。
あとはちょっと前だけど、
この「バレンシアガのミニ財布」の投稿も素敵だった。
ともすれば鬱陶しくなる機能紹介も、生活と実感に基づいて書かれてるから、押し付けがましくなくてよい〜!
私、前職でカタログ雑誌の編集をしてまして、
当時のミッションはいい企画を作るでもいい文章を書くでもなく、「担当商品を買ってもらうこと」だった。
通販なんだから当たり前!なんだけど、買ってもらうのって超超難しい。
そこで大事なのは、「買ったその先を具体的にイメージさせること」だと教わった。
「これを買ったら、こんな幸せな未来が待ってるよ(だから書いましょう)」と
買う前〜買った後のストーリーを提示してあげる必要があるのだと。
…というのを、SPURの投稿を読んでふと思い出しました。
どちらも物語があって、その商品の「良さ」が頭の中で自然に想像できる。
ロエベもバレンシアガも、価格の問題でそう簡単には買えないんだけどさ…
ちなみに「価格問題」については、カタログ作りでも色々と試行錯誤がありました。。
徹底的に競合品と比較し「商品の売り」を洗い出して企画立てたりしたのだが、それはまた別のお話〜。