練る子は育つ

都内のIT企業で働く28歳女性。読書、音楽、ゲームの記録

本屋大賞ノミネート:今村夏子「星の子」感想

 2018本屋大賞ノミネート作品。

超超超超超よかった!!これは読んだほうがいいです。

星の子

星の子

 

主人公・林ちひろは中学3年生。出生直後から病弱だったちひろを救いたい一心で、両親は「あやしい宗教」にのめり込んでいき、その信仰は少しずつ家族を崩壊させていく。前作『あひる』が芥川賞候補となった著者の新たなる代表作。

新興宗教にハマった家族を、娘視点で描いた作品。

冒頭から不穏な空気が漂ってはいるんだけど、読みやすい文体と、幼い娘・ちひろの視点が相まって悲壮感や重苦しさはない。むしろ、「水」に執着する様子はポップに感じるほど。

ちひろは成長するにつれて「世間とのズレ」をきちんと自覚していく。淡々と両親の「あり方」を受け入れつつ、学校の友だちや先生との関わりの中で、両親を客観的に見ることができるようにもなる。

ハタからみると「おかしい」家族でも、宗教にハマっているといえど、自分の家族。家族は家族なんだよなあ。

読み終わったあとは「あれ?これで終わり?」と投げ出された感覚になるけど、あとから心がザワザワする。お互いに見ている方向は同じでも、見えるものは違う。

 

あとからこの作品が芥川賞候補だったと知って腑に落ちた。村田沙耶香の「コンビニ人間」にも通じる、「自分の『普通』を基準とした場合の違和感」が溢れる。そんな作品。面白かった。