練る子は育つ

都内のIT企業で働く28歳女性。読書、音楽、ゲームの記録

映画化に期待。「そしてミランダを殺す」あらすじ・ネタバレ感想

久々に海外の現代ミステリを読みました。私がふだん使っている「読書メーター」の読書ランキングに入っていたので、ついつい。

海外ミステリを読んだのは、「その女、アレックス」ぶり。

帯に書かれた煽り文句は「この展開、予想できるはずがない!」。ということで、あまり深読みせずに素直に読んだら、見事、やられました。面白かった。

 

そしてミランダを殺す (創元推理文庫)

そしてミランダを殺す (創元推理文庫)

 
ある日、ヒースロー空港のバーで、離陸までの時間をつぶしていたテッドは、見知らぬ美女リリーに声をかけられる。彼は酔った勢いで、1週間前に妻のミランダの浮気を知ったことを話し、冗談半分で「妻を殺したい」と漏らす。話を聞いたリリーは、ミランダは殺されて当然と断じ、殺人を正当化する独自の理論を展開してテッドの妻殺害への協力を申し出る。だがふたりの殺人計画が具体化され、決行の日が近づいたとき、予想外の事件が起こり……。男女4人のモノローグで、殺す者と殺される者、追う者と追われる者の攻防が語られる鮮烈な傑作犯罪小説。

 

<ネタバレありストーリー概要・感想>

 

ミステリアスな美女との出会い
まず、テッドが見知らぬ美女リリーに空港のバーで話しかけられるという冒頭のシーンがいい。ミステリアスでドラマチックな出会いだけれど、残念ながら本作品はラブロマンスではない。空港という場所柄か、酔いも相まって、テッドはついつい自分の妻・ミランダが浮気していることをリリーに打ち明ける。さらに、妻を殺したいほどであるとも。
ここまではただの愚痴…なのだが、これに対してリリーが飄々と「ミランダの殺害願望」を肯定し、背中をぐいぐいと押してくる。
正直な話、あなたが奥さんを殺すということに対して、わたしには倫理的抵抗感はないわ。
ミランダとの出会いやミランダの浮気相手だとかをリリーに話しているうちに、テッドも「僕は本当に彼女を殺すべきなのかもしれない」と本気になってくる。彼女は「それは世の中のためになる」とさらに背中を押す。飛行機内で、二人の「ミランダ殺害計画」はとんとん進む。「殺害する気なら1週間後にここで会って計画を練りましょう」と約束を取り付けて二人は分かれる。うーん、なんか話進んでるけど、リリーがそこまで初対面のテッドに加担するのはなんなの?って不穏に思うのが第1章。ただテッドにとっては、リリーは得体の知れない女性だからこそ、「見えない共犯」として力強い仲間になるのである。
 
リリーの過去
「リリー何者だよ」と疑問を抱いて次の章へ進むと、早速リリーの視点で彼女の過去が語られる親切設計。彼女の過去は、想像以上に暗くて闇深かった。たとえば、幼少期。リリーのことを性的な目で見るキモい男・チェットを、こっそり家の近くの井戸に突き落としたり。その上から大きな石を落としたり。リリー…殺人してるじゃん…。でも彼女に罪悪感はないようだ。なぜなら彼は「死んでしかるべき人」だから。ということは、テッドへの助言(浮気をする奥さんを殺すことは倫理的に問題ない)も、きっと本心なんだろうなあ。
 
第一の死
さて、テッド視点。着々とミランダ殺害計画を立てたテッドとリリーだが…。ミランダをいつ殺すんだろう、どう殺すんだろう、と思っていると…まさかのテッドが死ぬ!ミランダの浮気相手のブラッドにあっけなく殺される。いつの間にか、狩る側が狩られる側になってた。完全に油断してた。テッド、本作から離脱。あっけなかったね。
テッドの死をニュースで知り悲しむリリー。 
 
悪女の真の姿
話はリリーの学生時代に遡ります。一人の男性・エリックと恋に落ちたリリー。甘い初恋だったがしかし、エリックの元カノ・フェイスと浮気されてしまう。エリックはまじ最悪な男で、週末はリリー、平日はフェイスを彼女にするというヤバすぎる(器用すぎる)二重生活をしていた。それを知った彼女は、エリックを殺す。彼のアレルギーであるナッツを利用して。死因はアナフィラキシー、またしても人殺しはバレない。
飄々と人殺しを重ねていくリリー、サイコパスすぎでは。。。
さて、その衝撃に浸るのも束の間。まさかのフェイス=ミランであることが明らかになります。。
つまりミランダは、リリーからエリックを奪った(かつテッドを奪った)「死んでしかるべき人」なのだ。ここからリリー対ミランダの悪女対決が始まります。どっちが勝つんだ…。
 
悪女vs悪女
リリーは、テッドの殺人罪で追われるブラッドを利用し、ミランダの殺害計画を立てる。
ブラッド、あなたはミランダに利用されてるの。彼女はあなたを売って逃げるつもりよ
リリーはブラッドに、ミランダを殺すように告げる。そうすればあなたは逃げられると。
だが…リリーがミランダを追う展開に見せかけて、ミランダはそのことに気づいており反撃計画を企てる、という「狩るもの/狩られるものがどんどん入れ替わる」怒涛の展開!この章はスピーディでスリリングでとっても面白かった。相手の行動をどこまで読み切れるかがカギとなる。ブラッドは利用されるだけなのがウケる。テッドといい、ブラッドといい、まじで使えない。男たちしっかりしろ。
 
悪女の最後
勝ったのはリリー。ミランダを殺して、さらにブラッドもささっと殺して、チェットと同じ井戸に埋めちゃいます。そのあと現れたしつこい刑事によってリリーの完全犯罪がバレるか…?と思いきや、危機一髪免れることができた。…かと思いきや、最後は父からのお手紙で、リリーの実家の庭(チェットやブラッドの遺体を隠してある)が掘り起こされることを知り、終わる。っていう。

 

 

セクシー系美女のミランダと、冷酷系美女のリリー。出てくる男たちの一歩、二歩先の思考回路。スピード感溢れる怒涛の展開。 一気読み必須でした。
メインの登場人物は「テッド」「リリー」「ミランダ」「ブラッド」って感じだけど、まじで男たちが空気すぎて笑った。しっかりしろよー。
読書だからこそ味わえる驚きの仕掛けもありますが、これ映像にしたらきっとめちゃくちゃ"映える"と思うのでぜひ映画化してほしい。