練る子は育つ

都内のIT企業で働く28歳女性。読書、音楽、ゲームの記録

本屋大賞ノミネート:伊坂幸太郎「AX アックス」感想

本屋大賞2018ノミネート作品。殺し屋シリーズ3作目。

相変わらずの伊坂節で、テンポよくぐんぐん読み進められた。安定。

 

AX アックス

AX アックス

 

最強の殺し屋は―恐妻家。「兜」は超一流の殺し屋だが、家では妻に頭が上がらない。一人息子の克巳もあきれるほどだ。兜がこの仕事を辞めたい、と考えはじめたのは、克巳が生まれた頃だった。引退に必要な金を稼ぐため、仕方なく仕事を続けていたある日、爆弾職人を軽々と始末した兜は、意外な人物から襲撃を受ける。こんな物騒な仕事をしていることは、家族はもちろん、知らない。『グラスホッパー』『マリアビートル』に連なる殺し屋シリーズ最新作!

 

<ネタバレあり感想> 

今作の殺し屋(主人公・兜)は「恐妻家」ということで、外ではバリバリ敵を殺している(というほど殺しのシーンはないけど)のに、家では妻の機嫌を常に伺っているというギャップがおかしくて微笑ましい。

前半3分の2は兜がバリバリ殺したり殺されそうになったりとスリリングな展開なんだけど、その最後、「え、そんなあっさり!」と思って二度読みするくらい、地の文で無機質に、兜が死んだことを知る。

ページをめくって後半は、がらっと様相が変わって、兜の息子・克巳が主役となっている。ああ、兜死んだのかー。とここでようやく実感。

自殺とされる兜の死に疑問を持つ克巳。

私も読みながら、「なんで死んだんー!」と思ってたから(桃のお気に入りは死ぬというフラグは立ってたにしても)、克己頑張れ、頑張って真実を突き止めるんだ、という気持ちに。

宿敵との対決シーン、「父が一番怖いのは、死じゃなくて母だ」っていう克己のセリフが最高だよね。もう、このセリフのためだけに、恐妻家設定あったんじゃないのっていうくらい。

そしてエピローグで夫妻の出会いまで描かれているんだから、憎い展開。守るべきもの、良き家族の物語。


ただ、個人的には前作の「マリアビートル」のスピード感とかめくるめく展開、伏線回収が最強すぎました。
マリアビートルには敵わないな、というのが読後の感想。

 

マリアビートルも読んでください。

 

マリアビートル (角川文庫)

マリアビートル (角川文庫)