練る子は育つ

都内のIT企業で働く28歳女性。読書、音楽、ゲームの記録

「シャーロック・ホームズの回想」感想

シャーロック・ホームズシリーズ第4作目。短編集「シャーロック・ホームズの回想」を読んだので感想を書いておきます。

今作もめちゃくちゃ面白かった…。シャーロックの兄・マイクロフトや、宿敵とされるモリアーティ教授が登場するのもこの作品です。

 

収録作品

  • 名馬シルヴァー・ブレイズ
  • ボール箱
  • 黄色い顔
  • 株式仲買店員
  • グロリア・スコット号
  • マスグレイヴ家の儀式書
  • ライゲイトの大地主
  • 背中の曲がった男
  • 入院患者
  • ギリシャ語通訳
  • 海軍条約文書
  • 最後の事件

 

特に気に入った作品

①グロリア・スコット号

シャーロック・ホームズの「最初の事件」。シャーロックの学生時代の友人であるヴィクター・トレヴァと、そのお父様にまつわる事件です。シャーロックに友人がいたなんて!

このお父様の助言によって、彼は探偵の仕事を始めることを決意したんだとか。

「ホームズさん、どうやって探り出されたのかはわからんが、実在のであろうと小説中のであろうと、探偵という探偵は、あなたの手にかかれば子どもも同然ですな。これを一生の仕事になさるといい。この世のなかをいくらか知っている男の助言として、お聞きくださいよ」

ワトスン、信じられないかもしれないけれど、ぼくの才能を買いかぶって認めてもらったうえに、この助言だ。これまでただの趣味にすぎなかったものを、職業にしてもいいなと、生まれて初めて思ったのさ。

探偵になったきっかけ気になっていたので、こういう出会いがあったんだとしみじみ。事件そのもののお話もなかなか壮大で、読みごたえありました。

 

ギリシャ語通訳

マイクロフト登場回です。BBCのドラマ「SHERLOCK」を見ていると、シャーロックとマイクロフトはお互い変わり者で、特に仲は良くない(がお互い気に掛け合っている)兄弟だと感じていたんだけど、これを読むと違った。シャーロックはマイクロフトの能力を認めている。「同じ才能をぼく以上にもっている」というのである。ワトソンも驚いて、「さすがに謙遜だろう?」と訊くのだが、これに対するシャーロックの答えがよかった。

ワトスン、ぼくはね、謙遜を美徳だなどとは思っていないんだよ。論理を扱う人間だったら、ものごとはなんでも正確にありのままに見なければならない 。必要以上にへりくだることは、大げさに見せるのと同じで、事実からはずれてしまうことになる

肝心の事件の話よりも、マイクロフトへの評価やマイクロフトとの推理合戦が面白かった。

 

③最後の事件

言わずと知れた、宿敵「モリアーティ教授」との対決のお話。といっても、モリアーティってこれまで一度も出てこない。コナン・ドイルがシャーロックを物語から撤退させようとするために、急にこしらえたキャラに感じた。笑 登場シーン少なすぎ!

直接対決の場所となった「ライヘンバッハの滝」はスイスにある。原作を読むまで「なぜロンドンじゃない場所で対決することになったんだろう?」と思っていたんだけど、納得した。シャーロックはモリアーティの手から逃げるために、ワトソンとともに旅に出ていたんですね。

この作品には事件も推理も全然出てこない。ホームズとワトソンというキャラクターに思い入れのある私たちにとっては、つらくも大事な一作となった。

 

 

事件の内容というよりは、キャラの人となりがわかる作品ばかりを並べてしまった…。

次は長編「パスカヴィル家の犬」を読みます!