「シャーロック・ホームズの回想」感想
シャーロック・ホームズシリーズ第4作目。短編集「シャーロック・ホームズの回想」を読んだので感想を書いておきます。
今作もめちゃくちゃ面白かった…。シャーロックの兄・マイクロフトや、宿敵とされるモリアーティ教授が登場するのもこの作品です。
シャーロック・ホームズの回想 新訳シャーロック・ホームズ全集 (光文社文庫)
- 作者: アーサー・コナン・ドイル
- 出版社/メーカー: 光文社
- 発売日: 2006/04/12
- メディア: 文庫
- 購入: 3人 クリック: 11回
- この商品を含むブログ (40件) を見る
収録作品
- 名馬シルヴァー・ブレイズ
- ボール箱
- 黄色い顔
- 株式仲買店員
- グロリア・スコット号
- マスグレイヴ家の儀式書
- ライゲイトの大地主
- 背中の曲がった男
- 入院患者
- ギリシャ語通訳
- 海軍条約文書
- 最後の事件
特に気に入った作品
①グロリア・スコット号
シャーロック・ホームズの「最初の事件」。シャーロックの学生時代の友人であるヴィクター・トレヴァと、そのお父様にまつわる事件です。シャーロックに友人がいたなんて!
このお父様の助言によって、彼は探偵の仕事を始めることを決意したんだとか。
「ホームズさん、どうやって探り出されたのかはわからんが、実在のであろうと小説中のであろうと、探偵という探偵は、あなたの手にかかれば子どもも同然ですな。これを一生の仕事になさるといい。この世のなかをいくらか知っている男の助言として、お聞きくださいよ」
ワトスン、信じられないかもしれないけれど、ぼくの才能を買いかぶって認めてもらったうえに、この助言だ。これまでただの趣味にすぎなかったものを、職業にしてもいいなと、生まれて初めて思ったのさ。
探偵になったきっかけ気になっていたので、こういう出会いがあったんだとしみじみ。事件そのもののお話もなかなか壮大で、読みごたえありました。
②ギリシャ語通訳
マイクロフト登場回です。BBCのドラマ「SHERLOCK」を見ていると、シャーロックとマイクロフトはお互い変わり者で、特に仲は良くない(がお互い気に掛け合っている)兄弟だと感じていたんだけど、これを読むと違った。シャーロックはマイクロフトの能力を認めている。「同じ才能をぼく以上にもっている」というのである。ワトソンも驚いて、「さすがに謙遜だろう?」と訊くのだが、これに対するシャーロックの答えがよかった。
ワトスン、ぼくはね、謙遜を美徳だなどとは思っていないんだよ。論理を扱う人間だったら、ものごとはなんでも正確にありのままに見なければならない 。必要以上にへりくだることは、大げさに見せるのと同じで、事実からはずれてしまうことになる
肝心の事件の話よりも、マイクロフトへの評価やマイクロフトとの推理合戦が面白かった。
③最後の事件
言わずと知れた、宿敵「モリアーティ教授」との対決のお話。といっても、モリアーティってこれまで一度も出てこない。コナン・ドイルがシャーロックを物語から撤退させようとするために、急にこしらえたキャラに感じた。笑 登場シーン少なすぎ!
直接対決の場所となった「ライヘンバッハの滝」はスイスにある。原作を読むまで「なぜロンドンじゃない場所で対決することになったんだろう?」と思っていたんだけど、納得した。シャーロックはモリアーティの手から逃げるために、ワトソンとともに旅に出ていたんですね。
この作品には事件も推理も全然出てこない。ホームズとワトソンというキャラクターに思い入れのある私たちにとっては、つらくも大事な一作となった。
事件の内容というよりは、キャラの人となりがわかる作品ばかりを並べてしまった…。
次は長編「パスカヴィル家の犬」を読みます!