本屋大賞ノミネート:柚月裕子「盤上の向日葵」
本屋大賞2018ノミネート。
将棋の世界を舞台にしたミステリ小説。将棋の知識ゼロでも面白く読めます。
埼玉県天木山山中で発見された白骨死体。遺留品である初代菊水月作の名駒を頼りに、叩き上げの刑事・石破と、かつてプロ棋士を志していた新米刑事・佐野のコンビが調査を開始した。それから四ヶ月、二人は厳冬の山形県天童市に降り立つ。向かう先は、将棋界のみならず、日本中から注目を浴びる竜昇戦会場だ。世紀の対局の先に待っていた、壮絶な結末とは――!?
<ネタバレあり感想>
序盤から、天才棋士・桂介が怪しいと匂わせる演出。桂介が犯人なのか、そうでないのか、という話が展開されるんだろうな〜と予想をしながら読み進める。
この「白骨死体」の事件を進める一方で、桂介の過去が明かされていく。虐待する父親を持つ家庭環境、そして理解ある大人と裏社会に住む大人との出会い。天才棋士になるまでの、暗くて、ただひとつ将棋という光だけのある桂介の人生が描かれる。
ぐっと、桂介に感情移入した終盤。やっと、冒頭の事件との関わりが見えてくる。最後の最後まで、一体どう繋がってくるのかわからないので、緊張感を持ちながら一気に作品を読み切ることができる。
重苦しい雰囲気だからこそ、対局シーンが文字通り「命を賭けた戦い」として浮かび上がるところがよかった。私は将棋のことは詳しくないけど、それでも思わず手に汗を握った。
将棋の知識はあるほうがベターだと思う。けれど、それなしでも面白く読めた。
ミステリと、勝負の世界と。結末は切ない。