練る子は育つ

都内のIT企業で働く28歳女性。読書、音楽、ゲームの記録

「もう読みたくない」トラウマ本3選

読書数は年間60冊くらいなのでそんなに多いタイプではないんだけど、2017年も「ああ怖かった…もう読みたくない…」と思った本があったのでこれを機に私のトラウマ本を紹介したいと思います。

やさしくて穏やかな小説も素敵だけど、たまには心がザワつく物語もいかがでしょうか。

 

1.恩田陸「Q&A」

Q&A (幻冬舎文庫)

Q&A (幻冬舎文庫)

 

都下郊外の大型商業施設において重大死傷事故が発生した。死者69名、負傷者116名、未だ原因を特定できず―多数の被害者、目撃者が招喚されるが、ことごとく食い違う証言。防犯ビデオに写っていたのは何か?異臭は?ぬいぐるみを引きずりながら歩く少女の存在は?そもそも、本当に事故なのか?Q&Aだけで進行する著者の真骨頂。


質問形式で進んでいくちょっと変わった小説。事故に関わった人々にインタビューすることで、あらゆる方面から事故の状況をつかんでいく…というストーリーで、どんどん引き込まれていく。だが、証言が少しずつかみ合わないのである。その「不気味さ」もクセになって、ページをめくる手が止まらない。

そして、形容しがたい「怖さ」をまとったまま、小説は終わるのである。

例えて言うなら、お化け屋敷をぐんぐんと進み、このへんでお化けが出てきそう…なドキドキMAXのところで放り出される感じ。ホラー小説ではないのでお化けは出てこないのが特徴的。私はミステリは大好きだけどホラーは全くダメなので、この何とも言えない怖さがトラウマになりました。


2.辻村深月「盲目的な恋と友情」

盲目的な恋と友情 (新潮文庫)

盲目的な恋と友情 (新潮文庫)

 

 タカラジェンヌの母をもつ一瀬蘭花(いちのせらんか)は自身の美貌に無自覚で、恋もまだ知らなかった。だが、大学のオーケストラに指揮者として迎えられた茂実星近(しげみほしちか)が、彼女の人生を一変させる。茂実との恋愛に溺れる蘭花だったが、やがて彼の裏切りを知る。五年間の激しい恋の衝撃的な終焉。蘭花の友人・留利絵(るりえ)の目からその歳月を見つめたとき、また別の真実が――。男女の、そして女友達の妄執を描き切る長編。


2017年の個人的ベスト3にも挙げた1冊だけど、正直もう読み返したくない。

前半「恋」、後半「友情」の二部構成。「恋」のヒロインは蘭花。自分自身の魅力に気づいていない美女の、恋愛模様を描いたこの第一部は別にいい。タイトルどおり、盲目的な恋ってあるよねーくらいの感想。問題は、第二部「友情」である。視点が変わって、蘭花の友人である(と自分では思っている)留利絵が主人公となり、第一部の物語を別視点で再度なぞっていく。蘭花の一番の理解者は自分だ、と思い込んでいる留利絵の、狂気的な行動にももちろんぞくぞくする。だけど、この小説の怖さはそこだけじゃない。たとえば美人と一緒に歩くときの、「私こんな美人と友達なの、いいでしょ」っていう優越感と、「この子には勝てない」っていう劣等感。「狂気的な女の子」のとる感情に、私自身も共感できる部分があると気づいたとき、違う意味での怖さを感じたのである…。

結末は「やられたー」感があって全体としては面白い(ただしめちゃくちゃ暗くて重い)んだけど、心が痛い部分が多すぎました。


3.柚木麻子「ナイルパーチの女子会」

ナイルパーチの女子会

ナイルパーチの女子会

 

 ブログがきっかけで偶然出会った大手商社につとめる栄利子と専業主婦の翔子。互いによい友達になれそうと思ったふたりだったが、あることが原因でその関係は思いもよらぬ方向に―。女同士の関係の極北を描く、傑作長編小説。

 

直木賞候補にあがり、山本周五郎賞を受賞している作品なんだけど、私にはまったく合わなかった。拒否反応が出るレベルで。

キャリアウーマンの栄利子と専業主婦の翔子が築いていく、友情とはとても言えない歪んだ関係。やっと見つけた「女友達」に固執するあまりストーカー的にエスカレートしていく行動。ストーリー自体のぞわっとする怖さよりも、主人公二人のどちらにもまったく共感できないイライラが勝ってしまった。「女子の色々」を描いた作品ってだいたい何かしら共感したり、共感しすぎてつらくなったりと、自分と重ねあわせながら読むことが多いんだけど、面白いくらいに意味がわからない。彼女たちの暴走した行動はいわば小説的なのでそこに共感する/しないは求めないのだけど、そもそもの「こういう女子っているよね」の前提についていけなかった。

ただ、この作品には「異なる価値観」を受け入れる・受け入れられないというひとつのテーマがある。その意味で言うと、私もその「異なる価値観を受け入れられない」彼女たちと同類なのかも…と立ち止まってゾッとした。2で挙げた辻村深月の小説は「共感できて」怖かったけど、この小説は「共感できなさすぎて」怖かった。

 

以上3作が、もう読みたくない、トラウマ本です。


ちなみに、恩田陸さんの「蜜蜂と遠雷」、辻村深月さんの「ハケンアニメ!」、柚木麻子さんの「ランチのアッコちゃん」「本屋さんのダイアナ」は超超超大好きな本です。
この3人の書くものは、良いほうにも悪いほうにも私の心を揺さぶるので、作品によっては好き嫌いがあるものの、いつも読むのが楽しみ。